令和4年3月、百年記念会館大会議室で、寳金総長と山口理事、矢野ダイバーシティ研究環境推進室長(当時)、女性教員9名による懇談会を行いました。
学内の多様な部局から出席した女性教員が、それぞれの立場から、ダイバーシティの観点で日々感じていることや経験したことを口にしました。
女性教員からは、次のような意見がありました。
- 学生アンケートで、女子学生の人数に比して、女性教員の少なさは異常だという意見があった。ダイバーシティの概念は理解しているが、(現状ではその推進は)個人の努力に任されている。
- 上位職の先生の理解が足りない可能性もある。教員公募を女性限定にすることを提案した時に「何故女性を増やしたいのか」と問い返されたことがある。大学全体でルールとして定められれば仕方なく対応する、というスタンスを感じた。
- 女子学生へのアンケートでは「女性はライフイベントが人によって様々なので、ロールモデルが近くにいたとしても、自分とかけ離れた境遇で成功した例であれば、自分には無理だと思ってしまう」という意見があった。
- (女性の)内助の功を求める日本の文化自体を何とかしなければいけない、という意見もあった。自分のラボを持ちたいけど、早く上位職に就きたいかといわれると分からない。理由は、教授がいつも忙しくて大変そうだから無理だと思う、という意見もあった。具体的なアイディアとしては、女性研究者の公募と同時に、パートナーのポジションも希望するなら手当するなども考えられる。
- 人事委員をやっていたが、女性を採ることにものすごく壁を感じた。女性限定の公募について以前は反対派だったが、もう、無理やりでもやらないといけない状況になっている。かつて北大でF3プロジェクトという女性のテニュアトラック制度があったが、そこで採用された女性研究者は、北大にほとんど残っていない。ある女性研究者から、ここでとても上にあがれる気がしない…という嘆きの声を聞いた。
- 女性限定の公募ができない場合でも、選考に女性が入るなどするべきでは。選考や昇任の基準の透明化もしてほしい。
- 女性の応募が少ないという話を聞くが、実際にどれくらいの割合で女性の応募があって、どれくらい採択されているのかを公開するだけでも、効果があるのでは。
- オックスフォードでは応募してきた人や採用の割合も公開している。やると決めたら、やれる大学はやれる。有効性は高いと思う。
- 外部に出さなくても、どれだけ女性が応募してきて、何人採用されたなど、各部局の中でしっかりデータを作っていって、問題意識を持ってもらうことが必要。
- 部局の女性教員採用後の育成について、メンタリングしてステップアップさせた結果を見える化して露出するようにすれば、採用した部局も頑張るのではないか。
- 女性を採用すると人事ポイントがプラスになるという制度が運用されてきたが、もう制度がかなり進んできているので、これからは、女性の比率が一定以下であればペナルティを課す、というのもありなのでは。
- FDなどの研修制度でアンコンシャスバイアスなど伝えていくことが必要。企業は徹底しているところがある。
- 制度設計、意思決定のプロセスに女性が入ることで、公募の書き方、女性が求めている情報が入っていないなどを見直すことができるのではないか。また、そこに女性教員を配することに対してインセンティブ、あるいはペナルティを付けていくこともあり得る。
- アンケートや調査を推進本部などから発信していただくと、しっかりデータが取れるので良い。興味がない先生にも、義務にする、FDで出欠を取るなどしては。企業はそうしたことを義務化しているという話も聞く。
- 研究費の申請と同じように年1回受講するとか、大学として推進する、教員全員が共有する必要があると思う。
- アメリカでは、授業評価において、フェアネス、ダイバーシティ、ジェンダーイクオリティという項目がある。この教員はフェアだったか、といった設問は、北大にはない。女性がやりづらかったといった声が教員にフィードバックされると効果的だろう。
- 無意識のジェンダーバイアスの例で、男女で育てられ方が違うということがある。委員会業務などで、女性は人当り、面倒見がいいという思い込みから、見える成果が残らない学生対応ばかり充てられてきた。適材適所のつもりかもしれないが、それこそが無意識のジェンダーバイアス。
- アンコンシャスバイアスをピックアップして、解決方法を提案してほしい。例えば、履修名簿や入学手続きでも男女の別があるが、ダイバーシティの観点では改善するべき。項目として無くせないとしても、答えないといった選択を用意する必要があると思う。
- 記念講演会では、ジェンダーに限らずいろいろな視点で話がなされていて、とても勉強になった。留学生、発達障害…多様な学生の受け入れなどにおいて、現場は大きな危機感を持ちつつある。FDを義務化しても、各部局で大事なこととして取り組んでくださるのでは。
- 多様な人が集まると、いいこともあるが、難しいことも起きる。受け入れる側がどう対応していいか分からない。研究室や近くの人がどうにかするなど、負担がかかるし、性に関わることならハラスメントにもつながりやすい。受け入れの支援もしていただけるとうれしいと思う。
- 部局で解決するのが難しいというとき、相談や問い合わせ、匿名での通報などが学生も含めできるところがあると良い。
- 女性が活躍するためには、男性の働き方も重要で、柔軟な働き方ができる必要があると思います。女性の問題、女性は大変そうだね、という問題ではなく、男性の育休や介護など、ぜひプッシュしていただきたい。
- 育休の間、研究費使えず大変な苦労をした。研究費がないと学会費が払えない、国際学術誌に出していたが、データの修正など、研究費が無ければできない。アプリケーションの契約なども、育休中に一度やめてしまうと、継続性が失われてしまう。研究環境を維持できない。男性の育休取得をしぶらせる原因にもなり得るので、組織的に手当していただける部分、工夫の余地がないのかと思う。
- DI推進室では介護でも支援を受けられる制度があるということで、進んできている。コロナ禍で、研修などはオンラインになってとても助かった。皆が真剣に、男女とも楽になるために気持ちよく支え合うために、北大が働き方改革を進めていけば、人気が出て優秀なスタッフ、学生が残ってくれるのではないか。
懇談会の終わりに、寳金総長から「もっと早くやるべきだった。アンコンシャスバイアスを明らかにする必要があるという点と、もうひとつは、制度設計をちゃんと考えてほしいという話が出た。制度設計には2種類あり、インセンティブとペナルティをどう使い分けるか。働き方改革のことも必要だ。北大がTHE大学ランキングの上位に上がって、社会貢献できる強い研究力を発揮するためには、絶対にダイバーシティを達成しなければいけない」という決意の言葉も述べられ、続いて「今後もこのような機会を設けていただきたい」とのコメントがありました。
山口理事からは、「大学は高邁な理念のもとに箱を作るのは好きだが、大事なのはこれを機能させること。今日の会で、魂が入ってきた。ここで得たものを生かしたい」との発言がありました。
ダイバーシティ・インクルージョン推進本部では、これからも多様な立場からの意見交換の場を設けていく予定です。